放課後、キミとふたりきり。
まさか藤枝さんとふたりきりになるなんて、さっきまで想像もしていなかった。
そもそも藤枝さんとわたしはなんの共通点もなかったので、ショッピングモールで会わなければ、彼女はわたしの存在を認識すらせずにいたと思う。
つまりわざわざ徳永さんを使ってわたしを呼び出したのは、数十分前にできたばかりの共通点についてのことだろう。
「えーと、沢井さん? 沢井なにさん?」
「あ。ち、千奈です。沢井千奈」
「そう。わたしは藤枝由香利。あなたのクラスの矢野瞬と、中学の時から付き合ってたの。つまり元カノね」
「ぞ、存じております……」
同学年で、藤枝さんの存在を知らない人はたぶんいないだろう。
美人で運動神経もよく、趣味のバイオリンで賞をとったとか、インスタのフォロワー数が芸能人並みとか、色々な噂がある藤枝さん。
地味でこれといった特技もないわたしとはまるでちがう。
いちばん明るい場所に立ち、輝くために生まれてきたような人なのだ。