放課後、キミとふたりきり。

「でもふたりは別れてるよ! 矢野自身が言ってたんだし、間違いない!」


栄田くんの必死な主張に、顔をうつむけながら首を振る。


「そうかもしれないけど、でも……実はいまも、教室でふたり一緒なんだよね」

「はあ? なんで藤枝と矢野が一緒にいるんだよ……」


虚をつかれたような栄田くんの声がしたけれど、周りは「ああ」と納得した様子で囁き合いはじめた。


「なるほど。藤枝さんの方が、まだ矢野に未練があるってことか」

「なんとなくそんな予感はしてた」

「えっ。そ、そうなの?」

「鈍いぞ栄田」

「矢野は罪な男だな~」

「別れたのにあんな美女にまだ迫られるか」

「イケメン滅べ」


からかいとやっかみが半々の言葉たちに、栄田くんはまた声を荒げた。



「だとしても、やっぱりダメだろ!」


いつもの冗談ではない、本気の彼の訴えに視聴覚室内がしんと静まり返る。



「栄田くん……どうして」
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