放課後、キミとふたりきり。

どうしてそこまで栄田くんが藤枝さんを拒絶するのかわからない。

きっと藤枝さんなら、よろこんでわたしたちに協力してくれると思うのに。



「だって、俺らでやるサプライズじゃん!」

「え……」

「矢野は俺たちのクラスメイトなのに、元カノなんかに任せるなんて悔しいだろ!」



真剣な彼の叫びに、騒がしかった視聴覚室が水を打ったように静まり返る。

教室にいるみんなが黙って、わたしたちのことを見守っていた。


目を赤くして唇を噛む栄田くんは、本当に悔しそうな顔をしている。

彼が心から矢野くんの転校を寂しく思い、何かしてやりたいと本気で思っているのが改めて伝わってきた。

真っ直ぐに、びりびりと。

わたしの心を震わせるほどに。


たぶん本気は伝染するんだろう。

完全に折れたと思ったわたしの心に、添え木を当てられたように感じた。

勇気を出せと、ぐるぐるに包帯を巻かれ励まされた気がした。
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