放課後、キミとふたりきり。

騒がしかった教室が、一気にお通夜のように暗くなる。

わたしの心にも、真っ黒な雨雲みたいな重い悲しみが押し寄せた。


明日、矢野くんが転校する。

つまり明日で、彼にはもう会えなくなる。

この教室から、彼の姿だけが消えてしまう。


それを悲しいと、寂しいと思う人がこんなにいるのに、どうして矢野くんは今日まで誰にも話さなかったんだろう。



「じゃあ……言わせりゃいいじゃん」


ぽつりと、栄田くんが呟く。

小さな瞳が、はっきりとした強い意志を持って光って見えた。



「矢野本人に、言わせりゃいいじゃん」


言ってほしい。

そう、栄田くんの心が叫んでいるように聞こえた。

悔しくて、腹立たしくて、何より……寂しい、と。
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