放課後、キミとふたりきり。
言葉を失うくらいショックを受けている自分に驚いた。
そうだよ……きれいで可愛い元カノに頼られて、断る方がおかしいよね。
どうしてわたしは、矢野くんはきっと断るだろうと思い込んでいたんだろう。
「いいの? やった! 瞬やっさしー!」
「調子乗んな! 言っとくけど、これが最後だからな。教えたら、もういちいち邪魔しにくんじゃねぇぞ」
「はいはい、わかってるって。じゃ、あたしの教室行こ!」
「って、俺が行くのかよ……」
相変わらずのテンポの良い会話に、みるみる膨らむ疎外感。
机の下でスカートの裾をにぎりしめ、唇を噛んだ。
だめだ、落ちこむな。笑え。
何があっても笑顔を絶やさないと決めたんだから。
「……悪い、沢井。ちょっと抜ける。すぐ戻るから」
「ごめんねぇ、千奈ちゃん」
ふたりに声をかけられ、うつむけていた顔を上げる。
「ううん。作業はひとりでも出来るし、急がなくて大丈夫だよ」