放課後、キミとふたりきり。
「だーかーらー! 何度同じ説明させりゃ気が済むんだよ! この式はこっちの公式を使うっつってんだろ!」
「だってぇ。瞬の説明雑すぎるんだもーん。もっと優しく丁寧に教えてくんないとぉ」
うるうるの唇を尖らせた藤枝さんが、先にわたしに気付いた。
整った眉をきゅっと寄せてこちらをにらんでくる。
彼女の視線に気づいて、矢野くんも顔をこっちに向けた。
「あ、沢井」
「ごめんねふたりとも。邪魔しちゃって」
謝りながらふたりの元に向かうと、矢野くんは長い脚を組みかえため息をつく。
「いや、全然。つーかこっちこそ時間かかって悪い。藤枝が飲みこみ悪すぎて」
「瞬ひっどーい。あたし頭は良い方だもん」
「じゃあなんでこんな時間かかるんだよ」
「だから瞬の教え方に愛がないから~」
「んなもんあってたまるかっ」
また息の合ったかけ合いを始めるふたり。
痛む胸に黙ってフタをして、わたしは持ってきたアルバムを矢野くんに差し出した。