放課後、キミとふたりきり。

いぶかしげに眉を寄せる矢野くんの横で、藤枝さんも不思議そうな顔をしている。

黙ってくれていることに感謝しながら、わたしは「それ、嘘なんだ」と言った。



「小森先生の誕生日サプライズっていうのは、嘘なの」

「え……いや、なんで? 意味わかんねぇんだけど」

「最初からそれは、矢野くんにあげるために用意したんだよ」

「俺にって……」



わけがわからない、という顔をする矢野くん。


やっぱりこうなっても矢野くんは転校のことを話してくれないんだなあ。


寂しいけれど仕方ない。

わたしはそこまで、矢野くんの壁の向こうまで踏み込めなかった。



「同じ学級委員が、矢野くんでよかった」

「沢井」

「わたし、帰るね。下校時刻過ぎたし。矢野くんも早く帰った方がいいよ。何か用事があったんでしょう?」

「おい、待てって」

「……いままでありがとう」

「沢井!」
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