放課後、キミとふたりきり。
「矢野とふたりきりになって違和感ない女子か……」
そこで、なぜかクラス中の視線が私に向けられた。
ギョッとして、今度こそ箸を床に落としてしまう。
ああ、しまった。
水道で洗ってこないと、最後のからあげが食べられない。
視線の集中砲火には気づかないふりをして、箸を拾いあげる。
そのまま何食わぬ顔で窓の方を向いた。
うーん、良い天気だなあ。
見上げた青空を、カラスがすいと飛んでいく。
そうやってやり過ごそうとしたけれど、後頭部に突き刺さるみんなからの視線は消えてはくれなかった。
「……沢井さんしかいなくね?」
「えっ」
ひとりの男子に名前をあげられ、つい振り返ってしまった。
すると正面からクラス中の視線を浴び、椅子から転げ落ちそうになる。
大勢に見られるのは苦手なのだ。
学級委員になっても、人の視線にはちっとも慣れなかった。