放課後、キミとふたりきり。

矢野くんの怒った声を背に、逃げるように教室をあとにした。


これでいい。

あとはアルバムの中身を矢野くんが確認してくれれば、それで。


わたしの気持ちは全部あのアルバムに残してきた。

尊敬の念も、感謝の気持ちも。

そしてずっと秘めてきた淡い恋心も。


言わせ隊のミッションは達成できなかったけど、せめて自分の想いだけは伝えられてよかった。


鞄の持ち手をぎゅっと握り直し、階段を降りようとした時、上から駆け下りてくる足音が響いてきた。



「いた! 千奈!」

「沢井さんどこ行くの!?」

「茅乃。栄田くん……」



慌てた様子で降りてきたふたりに、わたしは気まずい思いで後ずさりした。

でも、そうだよね。

スマホでメッセージひとつ送って逃げようとするのはずるいよね。



「ちょっと千奈! さっきのなに!?」

「みんなごめんって、何があったの!? また矢野になんか言われた!?」

「ううん。そうじゃない。そうじゃなくて……」
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