放課後、キミとふたりきり。

頭のいい矢野くんのことだから、クラスメイトが自分の転校について知ったことに気付いただろう。

サプライズはサプライズではなくなってしまった。



「ごめん、勝手に。でも、伝えなくちゃって気持ちが抑えきれなくて」


唇を噛むわたしを見て、茅乃が腕を組みながら笑った。


「いいじゃん」

「……え?」

「作戦に入る前の千奈といまの千奈、全然ちがうよ。なんだかすごく強くなったみたい」

「うんうん。沢井さん、矢野がこわくなくなった?」

「なんで……」



作戦は失敗してしまったのに、ふたりは優しく、どこか嬉しそうに微笑んでいる。


どうしてこんなにわたしを気遣ってくれるんだろう。

わたし、何の役にも立てなかったのに。


こんなに優しいクラスメイトたちの役に立てなかったことが悔しい。
もう少し早く勇気が出せていたら、何かが違ったかもしれないのに。



「ほんとにごめん!」

「えっ」

「千奈、待って!」


ふたりを振り切って階段を駆け下りた。

我慢していた涙が溢れ出す。
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