放課後、キミとふたりきり。
濡れた頬を拭う余裕もなく、生徒玄関で急いで外靴に履きかえ外に出た。
冷たい頬が吹きつけて、涙の跡がひやりと冷え乾いていく。
気持ちを伝えられたというより、一方的に押し付けただけだけど、もともと口にするつもりはなかった片想いだった。
それを本人に届けられただけ良かった。
良かったんだ。
わたしはがんばった。
そう思いたいのに、立ち止まり見上げた晴天とはちがい、心は雨に濡れている。
どうしたって割り切れない。
これで終わりだと、失恋を受け入れることができない。
明日でお別れという事実が、胸をまっぷたつに切り裂こうとする。
冬の青空がまたじわりと滲んでくる。
鼻をすんと鳴らし、再び歩きだそうとした時、後ろから駆けてくる足音が聞こえた。
「沢井!」
「え……や、矢野くん?」
玄関から走ってきたのは、重いアルバムを片腕に抱えた矢野くんだった。