放課後、キミとふたりきり。
「おーい。どうした栄田」
「腹でも痛いのか?」
「女子に告白でもされたか?」
「栄田が? そりゃねぇわ~」
男子たちに好き勝手言われている栄田くんは、このクラスのムードメーカー的存在だ。
授業中でもじっとしているのが苦手な彼は、小柄だけれど声が大きくて、とても目立つ。
彼女の子が大好きらしいけれど、その女子にはいつも猿だ子猿だと言われ、あまり相手にされていない。
かといって嫌われているわけでもなく、どちらかというと愛されている。
「異性としてはナイけど、友だちとしてはアリ」とはわたしの親友の弁だ。
そんな愛すべきいじられキャラの栄田くんが、ゆっくりと顔を上げる。
そばかすの浮いた頬が引きつっている。
いつも笑顔の彼の、らしくない強張った表情に、そばにいた生徒が顔を見合わせた。