放課後、キミとふたりきり。
あれ……?
でもそれじゃあおかしくない?
嘘や誤魔化しをしない矢野くんが、転校することを黙っている、ということがすでにおかしい。
「や、矢野くん!」
「お、おう」
「転校しないのっ!?」
「だから、しないって。うちの親の会社、転勤とかもねぇし」
矢野くんがはっきりと転校を否定しながら、わたしの手を引いて教室のドアを開ける。
わたしはどういうことかと混乱しながら、手を引かれるまま教室に入り、
その瞬間たくさんの破裂音に迎えられた。
驚いて矢野くんにしがみつく。
その拍子にわたしの鞄と、矢野くんの持っていたアルバムが固い床に落ちた。
「ハッピーサプラーイズ!!」
合唱のような明るい大きな声に、ハッと黒板の方を向けば、視聴覚室にいたはずのクラスメイトたちがそこにいた。
茅乃や栄田くんも、みんなそろっている。
無数の紙吹雪が舞い、テープが床に散乱している。
さっきの破裂音はみんなが手に持っているクラッカーだったらしい。
そしてみんなの後ろの黒板には、大きく『祝・カップル誕生!』とハート付きで書かれていた。