放課後、キミとふたりきり。
冷や汗をだらだらかきながら、ちぎれそうなくらい勢いよく首を横に振った。
わたしにできるわけがない。
わたしより適任の人が絶対いる。
わたしがやるくらいなら、生物室の人体模型を持ってきて椅子に座らせていた方がまだマシだ。
人体模型は人の視線に恐怖して、椅子から転げ落ちかけたりはしない。
向いていない。
絶望的なまでに向いていない。
みんな考え直した方がいい。そう言いたかったのに。
「よろしくね、沢井さん!」
栄口くんにイイ笑顔を向けられ、クラス中から期待に満ちた目を向けられてしまえば。
「は……はい」
もう頷くしかなかった。
この状況でNOと言えるほど、わたしの心臓に毛は生えていない。
むしろ無毛と言っていいと思う。
今度【心臓に毛を生やす方法】を検索をしようと決めた。