放課後、キミとふたりきり。
別の男子に肩を組まされ、鬱陶し気に押しのける矢野くん。
警戒しているように見えるのは、気のせいだろうか。
「遅かったな矢野! なにしてたんだ?」
「プリント出しに職員室行くって、俺さっき言わなかったか?」
「あー! そういえば言ってたな! そうだった!」
「コモリンは元気だったか!?」
「……なんか、お前らおかしくね?」
やけに声を張る友人たちに、矢野くんの眉がどんどん寄っていく。
ダメダメだ。みんな見事にテンパっている。
わたしも大根の自覚があるけれど、みんなも相当だ。
こんな調子じゃすぐにバレるんじゃないかとハラハラしたけれど、タイミング良く次の授業の先生が教室に入ってきたので、ほっと胸をなでおろした。
たぶんみんな「助かった」と思っただろう。