放課後、キミとふたりきり。
矢野くんは首を傾げながら、自分の席へと歩いていく。
その背中を、クラス中が目で追っていた。
すると視線に気づいたように振り返る矢野くん。
なぜかわたしと目が合い、驚き過ぎて勢いよく顔をうつ向けた。
しまった、不自然すぎた。
いまのはあまりにもひどいと思ったけど、どうすることもできない。
冷や汗をかきながら固まっていると、授業の号令がかかる。
それからようやくそろりと顔を上げると、矢野くんはもう席につき、前を向いていた。
わたしのせいで、せっかくのみんなの計画が台無しになるのは絶対に避けたい。
やっぱりわたしにあの矢野くんの口を割らせるなんて大役、務まるはずがない。
確実に失敗する。
むしろ失敗する以外の未来が想像できない。
「ねぇ茅乃。どうしたらいい? わたしムリだよ……」