放課後、キミとふたりきり。
クラス委員を決める時に、彼に言われた言葉を一言一句覚えている。
本当は教科係になる予定だったところを、みんなに推薦されクラス委員を任された。
諦めの境地で受け入れたわたしを、矢野くんはつまらなそうに見てこう言った。
『嫌なら嫌って言えよ』
言われたわたしは、予想外の言葉にぽかんとしてしまった。
嫌、という言葉がこれっぽっちも頭になかったから。
向いてないとか、ムリだとか、そういう否定的なセリフはいくつも頭を埋めつくしていたけれど、嫌だと気持ちは本当になかった。
『委員じゃなくて、係になるつもりだったんだろ』
『そうだけど……でも、もう決まっちゃったし』
『お前はそれでいいわけ?』
『う、うん。仕方ないよ。これ以上話し合いが長引くのもみんな困るだろうから。誰かがやらなきゃ終わらないもんね』
だから矢野くんも嫌々でも立候補したんだろう。
だったらわたしの気持ちもわかってもらえると考えていたわたしに、彼はがっかりしたような目を向けてきた。
『その誰かがお前である必要はないんじゃねぇの』
『え……』
『高校生にもなって、自分の意見ひとつまともに主張できねぇのかよ』
記憶にも心にも刻まれたそれは、そのまま傷になってしっかりと残っている。