放課後、キミとふたりきり。

「矢野は千奈が思ってるほど、怖い奴じゃないよ」

「……でも」

「千奈はもっと自信を持った方がいいって。こんなにいい子、そういないってわたしは思ってるんだよ? 自慢の親友なんだから」

「茅乃……」


そんな風に思ってくれていたんだ。

感動して涙を流したいところだけれど、残念ながらいまはその余裕がなかった。


「やっぱりムリ! うまくいく気がまるでしない!」


机に突っ伏し、腕の囲いの中で本音を吐きだす。

机の下で足をバタバタさせるわたしに、前の席からあきれたため息が聞こえてきた。


「この子は……まったくもう」


それきり、茅乃は何も言わなくなった。


淡々と進んでいく授業をどこか遠くに聞きながら、矢野くんの口を割ろうとする自分を想像してみる。

けれどやっぱり最悪の結果しか頭に浮かばなかった。

< 32 / 223 >

この作品をシェア

pagetop