放課後、キミとふたりきり。
「矢野は千奈が思ってるほど、怖い奴じゃないよ」
「……でも」
「千奈はもっと自信を持った方がいいって。こんなにいい子、そういないってわたしは思ってるんだよ? 自慢の親友なんだから」
「茅乃……」
そんな風に思ってくれていたんだ。
感動して涙を流したいところだけれど、残念ながらいまはその余裕がなかった。
「やっぱりムリ! うまくいく気がまるでしない!」
机に突っ伏し、腕の囲いの中で本音を吐きだす。
机の下で足をバタバタさせるわたしに、前の席からあきれたため息が聞こえてきた。
「この子は……まったくもう」
それきり、茅乃は何も言わなくなった。
淡々と進んでいく授業をどこか遠くに聞きながら、矢野くんの口を割ろうとする自分を想像してみる。
けれどやっぱり最悪の結果しか頭に浮かばなかった。