放課後、キミとふたりきり。
唇をきゅっと噛む。
胸の奥にうまれた迷いが、無意識にそうさせた。
栄田くんは本当に必死だ。
矢野くんのことを想って、考えて、悩んで動いている。
じゃあ、わたしは……?
わたしは何もしなくていいの?
このまま何もせず、逃げて、みんなに任せるだけで、私は―—。
頭の中で天秤が大きく動く。
右に傾いたかと思えば今度は左に。
左が傾いたかと思えば今度は右に。
ちっとも定まらず揺れ動き、わたしを惑わせる。
わたしは、矢野くんが苦手だ。
嫌われている自覚があるし、自分を嫌っている人の前に立つのはこわい。
彼の前ではいつも緊張してしまう。
わたしの前だと不機嫌そうな顔になる矢野くんが苦手。
でも実は、同じだけ憧れてもいた。