放課後、キミとふたりきり。

唇をきゅっと噛む。

胸の奥にうまれた迷いが、無意識にそうさせた。


栄田くんは本当に必死だ。

矢野くんのことを想って、考えて、悩んで動いている。


じゃあ、わたしは……?

わたしは何もしなくていいの?


このまま何もせず、逃げて、みんなに任せるだけで、私は―—。


頭の中で天秤が大きく動く。

右に傾いたかと思えば今度は左に。

左が傾いたかと思えば今度は右に。

ちっとも定まらず揺れ動き、わたしを惑わせる。


わたしは、矢野くんが苦手だ。

嫌われている自覚があるし、自分を嫌っている人の前に立つのはこわい。

彼の前ではいつも緊張してしまう。

わたしの前だと不機嫌そうな顔になる矢野くんが苦手。


でも実は、同じだけ憧れてもいた。

< 42 / 223 >

この作品をシェア

pagetop