放課後、キミとふたりきり。
「矢野、放課後ヒマ?」
「ヒマじゃない」
間髪入れず答えた矢野くんに、栄田くんだけでなく教室全体が凍り付く。
みんなしまったと思ったはずだ。
わたしたちがいくら作戦を練っても、矢野くんに用事があって、放課後残れなかったら意味がない。
よく考えてみれば、明日で転校するということは、引っ越しも明日か明後日に予定されているということ。
そうなると引っ越しの準備があったりと忙しいのは当たり前だ。
どうして誰もそのことに思い至らなかったのか。
「うそうそ! ヒマだろ? ヒマだよな!?」
「だからヒマじゃねーって」
「お願いだからヒマって言ってくれよ~っ」
すがるようにして泣きまねをする栄田くんに、矢野くんはため息をつきようやく顔を上げた。
はっきりと「面倒くさい」と書かれているような顔を。