放課後、キミとふたりきり。
「だ」
「だ?」
「だいじょう、ぶ」
なんとか返事をし、笑顔を作る。
茅乃が変な顔になったので、たぶんわたしは笑顔作りに失敗したんだろう。
無理に表情筋を動かすことはあきらめて、栄田くんたちのやりとりを見守る。
「矢野が転校するって? はあ~?」
「もう少しマシな嘘つけよ」
「つまんねーよバカ」
野次る男子たちに、そうだそうだとクラスメイトのほとんどが同調する。
そんな仲間たちをキッと小さな目で睨みつけ、栄田くんはまた叫んだ。
「嘘じゃねーよ! こんな嘘ついてどーすんだよ!?」
そして再び、教室が静まり返る。
今度は温度の低い静けさだった。
誰もが口を開くのをためらっている。
矢野くんが、転校する……?