放課後、キミとふたりきり。

クラスメイト全員が、心の中で悲鳴を上げたと思う。

それくらい彼の顔は不機嫌そうに歪んでいた。


ちなみにわたしは気持ち的には一〇歩くらい後ずさりした。

実際は恐怖で一歩も動くことは出来なかったのだけれど。


「俺がいないとこで勝手に決めやがって……」


忌々しそうに呟く矢野くんに、栄田くんや周りのクラスメイトが申し訳なさそうに謝り始めた。


「それはごめん。矢野、怒ってる?」

「いきなり過ぎたよね」

「もっと前からわかってればよかったんだけどな」

「でも知っちゃったからにはなにかしてあげたいし……」

「せっかくなら全員で祝いたいだろ?」


そう、知ることができたから。

だからみんなきちんと矢野くんとお別れがしたいんだ。

最後の日を、彼と楽しく過ごしたいんだ。


わたしもそう。

できれば笑顔で、彼を見送りたい。

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