放課後、キミとふたりきり。

「いらねー。お前うざい。さっさと行け」


元恋人に容赦なくそう言うと、矢野くんはしっしとまた犬でも追い払うような仕草をした。

ほっとしたのも束の間、じろりと上から睨まれ首を竦める。

はっきり言えよと、あきれられているんだろう。


「ほんとひどーい。あとで絶対様子見に行くからね!」


笑いながら、藤枝さんが友だちの所に戻っていく。

ちらりと私の方を見ていったことには気づいた。


なんだか牽制されたように感じた。

「瞬はあたしのよ」と、彼女の目が言っていた気がする。


そんな牽制をしてもらえる存在じゃないんだけどなあと、少し申し訳ない気持ちになった。

藤枝さんが、わたしと矢野くんの間に何か起こると考えていたらな、それは完全なとり越し苦労だ。


「沢井、決まった?」

「え! あ、う、うん。これと、これも、お願いします」

「はいよ。他になんか買うもんは?」

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