放課後、キミとふたりきり。

「え、ええと。ペンは私いっぱい持ってるし、ハサミもあるから。大丈夫だと思う」

「ふーん。じゃあこれ、買ってくるわ」


クラスメイトから徴収したお金の一部を預かっているのは矢野くんなので、アルバムとマスキングテープ、それからフキダシ型のフセンを手に、彼はひとりスタスタとレジに向かって歩いていく。

急いでいるようなその態度にハッとした。


そうだ、彼は今日「ヒマじゃない」と言っていたんだ。

きっと引っ越し作業があるんだろう。

明日で転校する彼に、のんびりしているヒマはないんだ。


私も、迷っているヒマはない。

矢野くんに「転校するんだ」って言わせなきゃ。


スマホを出して『矢野に言わせ隊』のグループトーク画面を開いた。




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 (いまから学校に戻ります)>千奈

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