Who?
太い女と僕の視線が絡み合った。ニッと笑みをこぼした女は、
「待ってたわ」
 これまた野太い声で言われた。僕は女の容姿に嫌悪は覚えなかった。DNA配列が無限なように人の容姿も無限なはずだ。科学的には。
「僕は待ってない」
「いえ。待っていたはずよ。あなたは私で私はあなた」
「よく分からないな。すらりとした表情の見えない黒髪の女性はどこに?」
 太った女は親指を飴玉のようにしゃぶり、「あなたは今、混濁しているのね」と指を口元から離した。
< 114 / 250 >

この作品をシェア

pagetop