Who?
「多かれ少なかれ人は誰かしらに迷惑を掛けているものよ。世界は広いし人は多い」
「少子化だけどね」
「セックスは気持ちいいのに」
「そういう問題じゃないと思うけど」
「平凡な生活が好きな人だけじゃないのよ。平凡な生活の中に刺激と快楽を求めるのが人間よ。じゃないと、人間壊れちゃう。必ず、平凡な中にも刺激を求めているはずよ。内に秘めてるのよ。悟られないようにね」
「僕もその一人かもしれない」
 僕は太った女の方を向いた。彼女は、うんうん、と二度頷いた。甘ったるい匂いとは不思議なもので、目の前にいる女性を、抱きたい、と思わせる効能があった。僕は欲求に応じてしまおうという悪魔と、欲求に抗おうとする天使との狭間で揺れ動いていた。視点の定まらない眼球に優柔不断な一面が表出していたかもしれない。
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