Who?
沈黙は深く周囲を席巻し、ファンタージー世界を彷彿とさせた。コーヒーカップから立ち昇る湯気がそのような空気感を演出させたのかもしれない。
 ふーと湯気を息で搔き消した井上ユミは少女のようでもあった。
 そしてこう切り出した。
「お願いがあるんだけど」
 女という異分子めいた生き物が、お願い、を口にするとき計算めいたものが発動していることが確実視させる。お願い、が発動された時点で、男側には事実上、拒否権はなく、もし拒否しようものなら、感情の波動攻撃が待っていることは否めない。というか予想ができなければ人生という荒波は渡ってはいけないだろう。勇しき女性社会、という国家レベルの政策の後押しもあり、女性軽視しようものなら社会のゴミクズと化す。まあ、それは言い過ぎか。
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