Who?
運良くベンチが空いていた。奇跡ね、と井上ユミはいったが、鳥のフンがあったがために座ることが拒否されたんだ、とアオイは説明した。
「それでも奇跡には変わりない」
 と井上ユミはいって聞かない。
 鳥のフンという災厄と大厄を任せられたのはアオイであった。鳥のフンは乾いていたが、その上に座るというのは貴重な体験であり、体験したくないという思いが交錯した。
「楽しんでお花見できそうにないな」
「慣れれば大丈夫よ。尻元過ぎればフン忘れる、て感じで」
「全然笑えない」
「笑わそうとしていないもん。事実をいっただけ。事実は変わらないわ」
「真実は複数ある。だけど事実は一つだけ」
「ここで名言でました」
 ベンチの目の前は湖だった。湖から白鳥が飛びだし水面が波打った。波紋が広がり、そして収束した。
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