Who?
人だかりの中心には、ドラム、サックス、キーボード、ベースというシンプルな編成だった。テクニックはあるがグルーヴがない。いささかまとまりに欠けるバンドだった。
 が、「キーボードとドラムの演奏が悪すぎる。ドラムの音が走ってるし、キーボードはテクがなさすぎるのよ。だからついていけない。サックスとベースは、ぼちぼちね」と井上ユミがいった。
 周囲はざわつき出し、バンドのメンバーはあからさまに敵意むき出しであり不快な表情が滲み出ていた。
「もしかして井上ユミ?」
 キーボードを弾いているこれまた井上ユミと同じ場所にホクロがある女性がいった。
「違うわ。よく似ているとは言われるけど。まあ、指摘は有難いから演奏変わってくれない。井上ユミに似ているだけあって、模倣が得意なの。あと、このメンズをドラムとして起用したいの。いいでしょ」
 井上ユミは堂々といった。アオイは、ふざけんなよ、と毒吐いたが彼女は耳を貸さない。
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