Who?
ウォーミングアップ忘れたな、と彼は意識的に負の感情が押し寄せたが、一打、二打、叩くごとに歓声が上がった。
 他の音が聞こえない。
 かろうじて井上ユミのキーボード音が聞こえた。キーボードでここまで哀愁的な雰囲気を出す彼女の演奏技術は素晴らしい。音が彼女の技術に応えているのか、技術が音に応えているのか、定かではない。だけど、これだけはいえる。彼女は、やはりプロだ。ベースもサックスも目を見開いていた。サックス奏者が時折、アオイにウインクした。意味はわからなかったが、オーケー、という合図だろう、と彼は勝手に解釈した。
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