Who?
「時間です」
「あら、冷たい人。また会えるのかしら」
 男の無言は、もう会えない、と言っているに等しかった。
 エレベーターの扉はゆっくりと閉じられ、男のモザイクがかった顔は、どこか微笑んでいるように見えた。
 私はしばらくエレベーターの扉を見つめ、降りた周囲を見回した。内装は赤で、たくさんの部屋があった。館というよりはホテルのようだった。どこかの部屋に入るべきなのだろうが、どの部屋に入ればいいかわからない。選択肢が多いほど人は迷い、戸惑う。
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