Who?
「わたしの肉体は死ぬが意志は残るだろう」
 それが対象者の最後の声だった。
 ミシっという音が聞こえた。カナエは身構えた。しかし、遅れた動作、動こうとしなかったことが問題だった。その後、対象者は何も語ることがなかった。首を吊って死んでいたのだ。これが彼の描いたラストドリームなのだろうか。なぜか、悲しくなり、彼女はロープから対象者を外し、椅子に座らせた。がくんとうな垂れた首が傀儡人形のようだった。
 カナエはデスクを見回した。ペンが散乱し、ルーズリーフが大量にあり、 USBメモリがあった。パソコンに挿し込み中身を確認した。『記憶』と書かれたファイルが無数になり、詳細なデータがあった。対象のデータを回収し、カナエは立ち去った。意識していたのだろう、今日という日を境に誰かに見られている感覚に陥ったのは。対象者の、君の夢にアクセス、という言葉が妙に引っかかった。
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