Who?
静寂。
 休符を挟んでの大歓声は三十名のスタンディングオベーションで井上ユミのシークレットライブは幕を閉じた。鳴り止まぬ歓声は井上ユミが舞台袖に下がっても当分の間空間を纏っていた。
「凄い!」
 鈴木は目を輝かせクールな声とは程遠い大声を放った。
「ブラボー」
 中村の悪ノリが炸裂した。
 アオイは圧倒的な虚脱感が全身を襲い、水をもらいに、バーカウンターに向かった。表面張力いっぱいに注がれた水を一気に彼は飲み干した。渇きは癒えず、もう一杯、もらい、すぐに喉に流し込んだ。「にいちゃん、いくねえ」とバーテンダーに言われ、「ぼちぼちですね」とアオイは返した。
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