Who?
「鈴木さん。あれ、誰でしたっけ?」
 中村の声が聞こえた。
「あれは私達が通う大学の佐々木学長。中村、失礼」
 鈴木は佐々木学長の元に向かい丁重な会釈をし白い歯をこぼしていた。営業スマイルといえばそれまでだが、みる者を魅了する輝きがそこにはあった。中村もそう思っていることだろう。事実、中村の目にはハートマークが印字されていた。
 が、佐々木学長がなぜここにいるのだろう。各界の有力者の集いといえど、大学の学長風情がこの場に来るだろうか。佐々木学長の周囲には国籍不明の人間が数人いた。アオイの目には彼らの表情ひとつひとつが偽善的に見えた。この場で心からの笑みが漏れるとはあまり思えない。なにかしらの利権がはびこっているのだろう。ビジネスはときに人の心を弄び、そして廃れさせるのかもしれない。アルコールの苦味と酸味が心を中和させてくれるのかもしれない。一時的に。
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