Who?
マンションまでの道すがらは街路灯が闇を照らしていた。見上げた空には星もなければ月もなかった。アオイは前を見た。誰かが歩いてくる。
 女?
 闇に照らされても、アオイには目の前を歩いてくる女性が目立つ容姿をしていることが視認できた。いや、容姿というよりは、身に纏う、なにかか。
 自然とアオイは歩みが遅くなる。なんだろう、そうしなければいけないような気がしたからだ。
 しかし、アオイの予測に反し女は一定の速度を保った歩みを止め、立ち止まった。なにやら探している。目的のものを確認し終えたのか、また歩みを進めた。その際に、一枚の紙切れが地面に落ちた。アオイは咄嗟に声を出し、地面に指をさした。
「落ちましたよ」
 女は立ち止まった。街路灯の光が女のシルエットを反映させ、際立たせた。深緑のニットにパープルのタイトスカート。なにより意志の強い眼差しと印象的な右頬のホクロ。そう、井上ユミがアオイの目の前に立っていた。
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