Who?
「曲は知らない。演奏者は脳裏をよぎるわね。シダーウォルトン。テクニカルを押し隠す演奏者ね」
「美人なのにツボをよく抑えている。もちろんリクエストした人もですが。まあ、ジャズがお金になりませんからね」
「お金にならない、じゃなくて、理解できないんでしょ。リスナーが」
「手厳しい」
「でも、シダーウォルトンは知性的な演奏をするわね。音の主旋律と副旋律のタッチを共存させる。深い探究心を感じさせるわ」
「ジャズをおやりで」
 おやり、て。今時そんな言葉を使う人間がいたことにカナエは驚いた。ジャズのくだりに関してはこの辺でやめといた方がいいだろう。音楽を聴くとどうしても体が疼く。
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