Who?
僕の思考停止と同じくしてエレベーターの動作が止まった。それでも強き意志の塊のような扉は開かない。僕は階数表示を見た。しっかりと十三階部分が黄金色に光っていた。今、僕がいる場所は十三階で間違いないし、間違っても他の階ではないことが推察できる。僕の他には誰もいないし、チン、という音以外は、この空間で音らしきものを知らない。先ほどから妙に都会の雑音が恋しいのはこのためか、田舎の長期滞在を余儀なくされたときに物足りなさを感じるのとどこか似ている。人間というのは慣れ親しんだ中での刺激を欲している生き物なのかもしれない。
 が、それが一番難しい。
< 8 / 250 >

この作品をシェア

pagetop