Who?
おや?
 カナエは首を傾げた。
 泥?
 さらに首を傾げた。
 潔癖症とまではいかないまでも、家に関しては綺麗に清潔に保っている。なのに、泥?電気、そう、電気をつければ全てが解決だ。電灯のスイッチを入れた。玄関がパッと明るくなった。カナエは目の前を見た。目を見開いた。
 そこには一糸纏わぬ女が怯えた目でカナエを見ていた。
 普通ならここで両者共に大声を出して取り乱すことだろう。不思議なことにどちらとも声を発しなかった。カナエに至っては口をぽっかりと開け、なにを言おうかと思案していた。
「どうしたの?」
 果たしてカナエの言葉は適切だったのか。銘々試さなければならない疑問の連鎖である。どうしたの?と問われて、明確な答えが返ってきたためしがない。
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