Who?
「自転車に乗ったことがある?」
 女は質問を質問で返したきた。悪い兆候だ。これはろくでもない出来事の前触れに過ぎない。
「あるわ」
「人生って恐ろしい。だから人生って自転車の十段ギアみたいなものよ。必ず使わないギアが一つはある」
 角砂糖四杯入れたような甘ったるい声だった。それでいて落ち着いているから、粘っこい。男は好きそうな声だが、女は苦手だろう。
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