Who?
女は名前はおろか自分が生まれた場所すらなぜここにたどり着いたかも覚えていなかった。たしかな事実は、自動車事故が起こり、朦朧とする意識の中で、たどり着いたのが、このカナエの家だったらしい。
 大きな荷物を抱えてしまったものだ。
 カナエは警察に言おうとしたが、「それはやめたほうがいい」と女に言われた。それはやめて、ではなく、それはやめたほうがいい、とカナエを案じて放った言葉に聞こえたが、「直感がそう告げるの」と女の天を見上げた表情が妙に艶っぽく魅了されてしまった自分は拭えない。
< 84 / 250 >

この作品をシェア

pagetop