Who?
「ピアノが好きっている技術レベルではなかったわよ。音を理解している風に思えるわ」
 カナエはピアノ近づき一音鳴らした。過去の記憶が走馬灯のように思い出されるが、搔き消した。
「自分でも弾いている曲がなんなのかわからないの。でも、体が覚えているみたい。この部屋に入って、ピアノを見たら、体が反応した。表現があってるならば、反応、そう、そうよ。それが正しい。きっちり、一時間は弾いていたと思う。長い年月の間。ピアノから音は出されていなかったのね。ピアノは埃が溜まり、音は曇っていた。ピアノ自体の寿命が近かったのかもしれない。でも、人工呼吸みたいに空気を供給し循環させれば、ピアノ本来の輝きが戻ると思ったわ。埃を振り払い、調律をし、私自身は指と手首のストレッチを入念にし、一音を出した。最初は全然ダメ」
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