私のエース
 だから俺はその事実を利用しようと考えた。


俺は何時も叔父さんの奥さんの形見のワンピースだった。
スーツもあったけど、ウエストサイズが違った。
男性は女性より骨格がいい。
だから当たり前って言ったらそれまでだけど……


でもワンピースは殆どが寸胴で、背中にジッパーがあったから何とか着ることが出来たのだ。


俺は学生服に着替えてから、中から出て来る所を待ち伏せして偶然を装って接近した。

何か問題が起きた時の御守りにと考えたからだった。


「あっ!?」
先生は小さく言って、ばつが悪そうにそそくさと現場を立ち去った。


でもその後は何も起きることなく今日まで……
なんとなく過ぎていた。




 叔父さんは元は警察官だったらしい。


『弱い者イジメをするヤツが許せい熱血漢だった』

叔父さんを良く知っている人は口を揃えて言う。


多分俺が物心付いた頃だと思う。
確か一度、正装した姿を見た気がする。


叔父さんと叔母さんの結婚式の時の物だ。


警察官の結婚式には、正装の式服がレンタルされる。
肩にブラシのような物が付いた物凄く立派な、誰でも惚れ惚れする位格好いい姿だった。


(カッコイイ!!)
素直にそう思った。


でもその後すぐ……
逆恨みされて、新妻が殺害された。
叔父さんはそう思ったそうだ。
それには深い理由があったんだ。




 親身になって世話をやいていた元暴走族の男性を、救ってやれなかったのだ。

そのために服役した男性に恨まれていると思っていたからだった。


妻が殺されても、身内は捜査に加わえてもらえない事実が叔父さんを変えた。

自ら容疑者を追い詰め、危害を加わえてしまったのだった。


誤認逮捕の上の暴力事件。
警察官として、してはならない事だった。


それでも釈放された容疑者を執拗に追うために……
叔父さんは辞職したのだった。




 悲しい現実だった。
叔父さんは自分を押さえられなかったことが許せなかったらしい。


『幾ら何でも、アイツが真犯人のはずがない。と思うけど、体が反応していたんだ』
何時だったか、そんなことを言っていた。


その後警察官を辞め、身に着けた追跡や張り込みを生かして探偵事務に就職したのだった。


そしてアパートの一室を事務所代わりにして独立。
その部屋は殺された新妻との愛の巣だった。


叔父さんはまだ捕まらない真犯人を、心の何処かで追い求めていたのだ。
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