私のエース
 福田千穂。
保育園時代、何時も一緒だった。


いや、多分そのずっと前から……

俺と千穂は遊んでいた。


お祖母ちゃんに送ってもらう時も、帰る時も。


千穂の両親は俺の母と同じ職場だった。
だから帰って来るまで……


そうだよ。
保育園に行く前から、俺達はずっと一緒だったんだ。


決して言い訳じゃない。

だから尚更気が付かなかったんだ。




 やはり二人が仕組んだことだった。
でも二人は、自分達が殺したとは思っていなかったようだ。


(キューピット様か……あれっ!? 俺がコンパクトに見た圧倒的威圧感。あれがキューピット様か。だとしたら、太刀打ち出来ない!)


三連続で誰かが死ぬ……

その最後の一人を助けられない!


俺は……
余りにも未熟者だった。




 女装までして松尾有美と始めた犯人探し。
それがこんな結果をもたらせることになるなんて……
俺は改めて力不足を感じていた。


でも、此処から離れる訳にはいかない。
たとえどんな結果が待っていようが、最後まで聞かなければいかないと判断した。




 「そうね、それだったら、誰が良いの?」
町田百合子が殺してほしい人を催促した。


「うーん、そうだなー。磐城君以外なら誰でもいいわ」


「だったら、最初に戻そうか?」


(えっ、最初? 最初って何だ?)


「最初?」

千穂も俺と同じ反応だった。




 俺は何が何だか判らずに聞き耳を立てた。


「そうよ。始まりは有美の親父じやない? だから今度は松尾有美。後追い自殺なら誰も傷付かないから」


(えっ!? そんな……)

恐る恐る有美を見る。
有美も判断が着かないようだった。


(当たり前だ。次に命を狙われる人物名として取り上げられたのだからな)


「あっ、それがいい。物凄くいいアイデア」

暫く考えてから千穂が言った。


「そうよね。松尾有美だったらきっとみんな大喜びするはずよ。だってあの子サッカー部のエースの彼女じゃない?」

悪びれた様子もなく、千穂は平然と言い放った。




 「そう。ライバル何て始末した方がいいのよ」
百合子が言う。


「みんな喜ぶものね」
千穂はご機嫌だった。


俺は愕然とした。
千穂の発言は有美の死だけではなく、みずほの死さえも喜んでいるようにしか聞こえなかったからだ。


(千穂、そんなにみずほの死が嬉しいのか?)
俺は恐ろしくなった。




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