私のエース
 (あの時、俺もこんな風だったのだろうか?)

俺は、みずほが自殺したとのメールを受け取った後の行動を全く覚えていない。

気が動転していた。

何が何だか解らす、ただみずほを求めてさまよっていた。


『助けてー!!』と叫んだみずほ。

あの声が……
まだ俺の耳で、頭の中でこだましている。


俺はあの時、屋上を見た。

其処の柵から何人ものクラスメートが顔を覗かせて笑っていた。
あの口角の上がり具合は、それ以外考えられない。


俺はあの時、みずほのあじわった恐怖を感じた。

肌の毛と言う毛が総立ち、縮み上がる程の衝撃。


俺は改めて、あの二人が許せなくなっていた。


それでも……
それでも千穂は、俺の大切な幼なじみだった。

そう……
大切な友達だったのだ。




 そして有美は……サッカー部のエースに愛されたために、自分が死んでも誰も悲しまない事実を知ってしまったのだ。


そう、みんな無関心。
でも、それでいながら気にしている。
それはみずほの、成績優秀な生徒が一人居なくなったからラッキー。
と思ったライバル達にも繋がっていた。


それでも、逃げてほしくはなかった。


あの二人と……
キューピット様と戦ってほしかった。


微力ながら俺も協力しようと思った。
俺に何が出来るのか解らないけど。




 (やはり俺のせいか?)

一方俺は……

みずほに負わせてしまった罪に苛まれていた。


みずほの死は、サッカーグランドに俺を近付けなくするためだった。
それだけのために自殺に見せ掛けられて殺された。

キューピッド様を使えば、思いのままに殺人が出来るとあの二人は思っているようだった。

それも自分の感知しないところで。


もしかしたら、本当にあの二人の居ない時だったのかも知れない。


キューピット様任せ。

他人任せ。
だったのかも知れない?



 集団心理を巧みに利用した計画的殺人。

キューピット様の名前を借りて……

自殺させようとして、追い詰めたのだろうか。

では、みずほは何時言ったのだろうか?


『助けてー!!』
と……

携帯はその後で奪われたのか?
それとも……

みずほが堕ちて来る所で待っていて……

だから取り上げることが出来たのだろうか?


屋上にいるクラスメートに自殺の名を借りた殺人をさせておいて。


でも……


それにしては携帯はキレイなままだった。




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