私のエース
 『昨日キューピット様を遣ったら、アンタが死ぬと出たの。だからアンタは死ななきゃいけない。さっさと此処から飛び降りて』

業を煮やした百合子は、私の自殺を要求した。


百合子が近付いてくる。
私は思わず身構えた。


そんな私の姿を見たのだろうか?
磐城君はたまりかねて屋上へ出てきてくれた。


担任の姿が見えないことは薄々感じていた。


(私が居なくなったら継母と気兼ねなく付き合っていけると判断したのだろう)
私はそう思っていた。


そんな時に磐城君が現れてくれたのだ。
それだけで嬉しくなった。


(既にキューピッド様で《いわきみずほ》と出ているのだから、《まつおゆみ》の代わりに自分が墜ちるても、問題はない)
磐城君はきっとそう思って此処に来てくれたのだと判断した。




 『な、何なの!?』
百合子が慌てる。


『磐城君……何時から其処に居たの……?』
青ざめながら千穂が言う。


『俺は何もかも知っているんだ。二人がみずほを殺したことも』


『何言ってるの!? みずほは自殺じゃない!』
百合子が噛みついた。


その時、磐城君は録音機のスイッチを押した。


『ねえ、次に死ぬのは誰にする? だって三連続なんでしょう? 誰が続かなきゃ意味無いと思うのよ』


『これは!?』


『そうだ。あの時のカフェでの会話だ』




 千穂が泣き崩れる。


『千穂よ! 千穂が岩城みずほからあんたを奪いたかったのよ!』

百合子は全ての罪を千穂に被せようとして、指を差しながら言った。


『嘘つけ! 橋本翔太をレギュラーにしたかったのは一体誰だ!』

磐城君の放った一言に百合子は言葉を詰まらせた。




 でも百合子は開き直った。


『いい千穂。松尾有美は自殺よ。良く覚えておきなさい』

百合子が私の腕を掴んで柵に押し付けた。


その時、隠れていた担任が飛んで来た。


『先生!?』
千穂が慌てている。

でも一番驚いたのは私だった。


まさかずっと見守っていてくれたなんて……


(ごめんなさい先生、私てっきり裏切られたと思っていた)


担任は起点を利かせて、タンクの横で見張っていたのだった。


百合子は磐城君を睨み付けていた。


『あんたが……』
百合子はそう言うと、磐城君の腕を掴んだ。


『《いわきみずほ》と初めから出てたのよね。アンタだって良いってことよ!』
百合子は興奮していた。




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