Versprechung
「リラ、お話ししよう。」
珍しく、アドラーが私にそう話しかけた。
それが少し嬉しくなって、思わず張り切った声でうん、と返事する。
彼は今日は女神像に礼拝をしていない。
窓の外に振るナイフの雨をしばらく見つめていただけだ。
こんな日は滅多にない。
「何の話?」
私がそう訊くと彼は微笑み、祭壇から一番手前の長椅子に座った。隣に来るように促したので、私も隣に座る。
嬉しいことでもあったのだろうか、いつもと違って穏やかで明るい表情だ。
口元になお笑みを浮かべながら彼は言う。
「未来の話だよ。」
「ミライ?」
聞き慣れない言葉。私は眉間にしわをよせる。
「これから先のことさ。リラには信じられないと思うけど、何日かしたら俺たちはこの教会から出ていくんだ。新しい世界で生きていくことになるんだよ。」
「外の世界で?本当に?」
思わず口元が緩んだ。
外の世界。まさか本当に行くことが出来るなんて。
こことは全く違う別の場所。
一体どんな場所なんだろう。
どんな景色が広がっているんだろう。
「安全な所だよ。そこではナイフの雨は降らない。守ってくれる人もいる。
外の世界に行って、何をしたいのか。
是非とも話し合ってみたいんだ。」
咄嗟に声が跳ね上がった。
「じゃあ、毎日おいしいご飯を食べたい!」
「うん。」
「いっぱい遊びたいし、色んなところに行きたい!」
「うん。」
「沢山の人と友達になりたいし、いっぱい話しもしたいな。
…あっ!アドラーも話してね。」
「…うん。」
「あと、見る景色がもっと明るくなったらいいな。建物の中が赤くて、外が黒い景色なんてつまらないもん。」
「うん。」
「明るくなったら、太陽の光に当たりに行くの。暖かいだろうなぁ。
こんな固くて冷たいところじゃなくて、暖かくて柔らかい場所で眠りたい!
アドラーもそう思うでしょ?」
「…そうだな。」
「外の世界に出たら、二人で色んな場所に行こう!いっぱい話して、いっぱい遊ぼう!」
「……」
「きっと新しいことばかりで不安だと思う。でも、二人で一緒にいたら絶対楽しいことばかりに変わると思うの!
だからね、ここから出ても側にいてね。」
「……」
「アドラー?」
彼からの相づちが突然消えた。心配になって、顔を覗きこむ。
彼は表情もなく呆然としていた。
びっくりして、私は彼を揺り動かす。
「アドラー、ねぇ、アドラー?」
すると、ようやく彼の口元に笑みが戻った。こちらを見て、笑顔で頷く。
「…うん、いる。側にいる。」
「本当?!」
「うん、本当だ。」
「ありがとうアドラー!大好きだよ!」
私は兄に懐く妹のように、彼に抱きついた。
彼は「オイ、よせって」、と言いつつ私の頭を撫でてくれた。
「いつまでも側にいるよ。」
珍しく、アドラーが私にそう話しかけた。
それが少し嬉しくなって、思わず張り切った声でうん、と返事する。
彼は今日は女神像に礼拝をしていない。
窓の外に振るナイフの雨をしばらく見つめていただけだ。
こんな日は滅多にない。
「何の話?」
私がそう訊くと彼は微笑み、祭壇から一番手前の長椅子に座った。隣に来るように促したので、私も隣に座る。
嬉しいことでもあったのだろうか、いつもと違って穏やかで明るい表情だ。
口元になお笑みを浮かべながら彼は言う。
「未来の話だよ。」
「ミライ?」
聞き慣れない言葉。私は眉間にしわをよせる。
「これから先のことさ。リラには信じられないと思うけど、何日かしたら俺たちはこの教会から出ていくんだ。新しい世界で生きていくことになるんだよ。」
「外の世界で?本当に?」
思わず口元が緩んだ。
外の世界。まさか本当に行くことが出来るなんて。
こことは全く違う別の場所。
一体どんな場所なんだろう。
どんな景色が広がっているんだろう。
「安全な所だよ。そこではナイフの雨は降らない。守ってくれる人もいる。
外の世界に行って、何をしたいのか。
是非とも話し合ってみたいんだ。」
咄嗟に声が跳ね上がった。
「じゃあ、毎日おいしいご飯を食べたい!」
「うん。」
「いっぱい遊びたいし、色んなところに行きたい!」
「うん。」
「沢山の人と友達になりたいし、いっぱい話しもしたいな。
…あっ!アドラーも話してね。」
「…うん。」
「あと、見る景色がもっと明るくなったらいいな。建物の中が赤くて、外が黒い景色なんてつまらないもん。」
「うん。」
「明るくなったら、太陽の光に当たりに行くの。暖かいだろうなぁ。
こんな固くて冷たいところじゃなくて、暖かくて柔らかい場所で眠りたい!
アドラーもそう思うでしょ?」
「…そうだな。」
「外の世界に出たら、二人で色んな場所に行こう!いっぱい話して、いっぱい遊ぼう!」
「……」
「きっと新しいことばかりで不安だと思う。でも、二人で一緒にいたら絶対楽しいことばかりに変わると思うの!
だからね、ここから出ても側にいてね。」
「……」
「アドラー?」
彼からの相づちが突然消えた。心配になって、顔を覗きこむ。
彼は表情もなく呆然としていた。
びっくりして、私は彼を揺り動かす。
「アドラー、ねぇ、アドラー?」
すると、ようやく彼の口元に笑みが戻った。こちらを見て、笑顔で頷く。
「…うん、いる。側にいる。」
「本当?!」
「うん、本当だ。」
「ありがとうアドラー!大好きだよ!」
私は兄に懐く妹のように、彼に抱きついた。
彼は「オイ、よせって」、と言いつつ私の頭を撫でてくれた。
「いつまでも側にいるよ。」