アオゾラをカナデヨ
ふう……さて、行こう。

不思議だ。ほんの少しの触れ合いだけで、こんなにも気持ちが落ち着くなんて。さっきまで緊張で震えていた指も、いつもの感覚が戻ってきていた。

まだあの大きな手の温もりが残る手を握りしめ、小さく深呼吸して音楽室のドアを開ける。

「はい、奥士さん。その譜面台の前に立って下さい」

「はい、宜しくお願いします」

いつもとは全く違う雰囲気の音楽室。オーディションを受けるのは3度目なので、どのようなことをするのかは分かっているが、この緊張感には慣れることはない。

〜♪〜♪

先生に言われた音階やフレーズをいくつか吹く。

思っていたより指は素直に動いてくれて安心する。私らしい、アオゾラの音。

「はい、いいよ」

「はい、ありがとうございます」

安斉くんのおかげだな。
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