アオゾラをカナデヨ
「なーにー?オレのカイロって?」

安斉くんの後ろ姿を見つめる私に麻美が肘で突きながらからかうように言う。

「あっ、いや。ちょっとね」

「えー?何よ?怪しいな」

適当にごまかす方が怪しまれるのは分かっているが、うまい言葉が見つからない。

なんで麻美の前でそんなこと言うかな。意識してるのは私だけってこと?

「いや、何もないよ。オーディションの時に安斉くんにちょっと助けてもらっただけ」

「ふーん。2人、仲いいよね」

まだ腑に落ちない様子の麻美に、さっさと練習しようと促して席を立つ。

麻美や莉子にもちゃんと話さないとな。ずっとこんな風にはぐらかしていると、自分の気持ちも誤魔化しているようだ。

安斉くんの気持ちは正直分からない。私のことをどう思ってくれているのか。

誰とでも仲の良い安斉くんだから、私に話しかけてくることなんて特別なことじゃないのは分かっているけど。

あのオーディションの日、照れた表情で私の手を握ってくれたあの時は、確かに私にだけ向けられた優しさだった。
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