アオゾラをカナデヨ


「クラ‼︎ そこ遅いっ!メロディだぞ、分かってるのか⁈」

タクトを譜面台にカツカツと叩き鳴らしながら小沢先生は大きな声をあげる。

いつもの光景、いつもの声。

「クラだけ、もう一回‼︎ サン、ニ!」

クラリネットメンバーに体ごと向き、タクトを振り上げる。その手にも力が入っているのが分かる。

「……分かった。ファーストの連符だ。タタタター、じゃない!タタタタッ!そこだけ、吹いて」

「……始まったね、雄叫び」

隣の実梨が囁いてくる。

「うん……」

本番が近づくといつもこの調子だ。

コンクールはまだ先だが、入学式や新入生歓迎会、5月の連休明けにはコンサートと、たくさんの本番が控えている。

外はもう夕暮れ時。他の部活はもう帰り支度を始めている頃だ。

厳しい部活だということは身を以て分かっているつもりだが、やはりこう怒鳴られているばかりでは気が滅入ってしまう。

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