アオゾラをカナデヨ
一通り話し終わると笑顔で、お疲れさんと言うのもいつもの小沢先生だ。

それからいったんホールのロビーに出て待機する。そこには演奏を聴いてくれた家族やメンバーに選ばれなかった後輩たちが集まってくれていた。

「ソウ!」
「あ、お母さん」

お母さんは、中学の時から欠かさず私の演奏を聴きにきてくれている。

「よかったよー、ソロ」

「ほんと?」

「うん、結構響いてたよ」

お母さんの言葉にホッとする。

「いっちゃんも誘ったんだけどね、部活だって」
「ああ、うん」

一平だって、総体やらなんやらで忙しい時期なんだ。

「じゃあ、お母さんも仕事だから、行くわね」

「うん、ありがとうね」

足早に会場を後にするお母さんの後ろ姿を見送ると、そこに安斉くんと演奏を聴きにきた香子の姿が目に入る。

キラキラした笑顔で何かを話す香子、手で安斉くんの袖を掴んでいる。

ギュッと鷲づかみにされたように痛む胸。何を話しているんだろう?

背中を向けている安斉くんの表情は伺えない。
告白、したのだろうか。
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